| みなさんこんにちは、レジオンデザインの三上紀子です。抜けるような秋の空にコスモスの花が揺れています。さわやかな秋の日、いかがお過ごしでしょうか。
10月に入って夕暮れが早くなってきましたね。秋のつるべ落とし・・といわれるように、夕刻、気が付くとあたりは日が暮れて・・というシーンも多くなりました。私の好きな古典のひとつに清少納言の「枕草子」があります。「春はあけぼの、ようよう白くなりゆくやまぎわ」で始まる冒頭はあまりにも有名ですが、秋の稿では「秋は夕暮れ、夕日のさして、山の端いと近うなりたるに・・・」と、日が短くなってきた秋の夕暮れの寂しさと美しさを読み上げています。
私はこの四季の美しさを読んだ第一段がとても好きで、何かあるごとにふと思い出したりするのですが、本当に日本人の普遍的な自然観をとても美しく簡潔に表現していると思います。
現在、偶然にも「新日本様式」について考える機会に触れ、日本らしさについて改めて整理をしているのですが、この「自然観」つまり「自然を愛でるこころ」は、世界の中でも日本人独特の情緒性としてあげることができるそうです。
先月ご紹介した「室礼(しつらえ)」や先週の話題の「月見台」などにも現われているように、実際、日本人の「自然観」は暮らしの中のあらゆるところに表現されていて、住まいのつくり方や建築材料の選び方にまで影響しています。
例えば、本日の話題−住まいの建具もその代表例です。古来日本の住まいの建具は「引き戸」が主ですが、実はこの引き戸、住文化的にも日本特有のものといわれています。中国の建具は大陸文化の開き戸(ドア)ですし、日本と同じように靴脱ぎの習慣があり住文化が類似していると言われているお隣の韓国でも引き戸ではなく建具は開き戸(ドア)なのです。
日本の建具の中でも、私のお気に入りは「雪見障子」。雪見障子というのは下部半分にガラスが入っていて、下部の障子をすりあげると向こう側が見えるようになっている障子のことです。
歴史をさかのぼると、もともと日本の住まいは平安時代の寝殿造りがルーツなのですが、平安時代の住まいではまだ障子やふすまといった建具はなく、外部への開口部は蔀戸(しとみど)で開けているときは御簾(みす)をたらし、室内の各部屋の仕切りは帳(とばり)や衝立(ついたて)などで仕切っていました。そういえば、「枕草子」の中にも、御簾を半分上げて庭に降り積もった雪を見て楽しむ・・という内容の段落が登場します。その後室町時代をへて、書院造り・数奇屋造り・・と住まいのかたちも発展していくにつれて、障子やふすまといった建具が登場するのでが、障子が登場した後も「半分明けて庭を見る」という<楽しみ>のために日本の匠の技をもって作られたのが雪見障子といえるでしょう。「格子戸」などもそうですが、空間と空間を完全に仕切るのではなく、時によっては向こうの様子が見えるようにする、または向こうの様子が「見え隠れする」位の微妙な間合いで仕切る。なんとも日本らしいファジーなすまいの装置ではないでしょうか。いろいろな技術や設備が発達し、生活様式が変化した現代ですが、このような自然感に基づいた住まいの情緒性はまだまだ私達日本人の中には健在です。そのような日本特有の「変わらないもの」を大切に、住空間の設計に携わっていきたい・・と思う今日この頃です。
さて、次週はお料理レシピの話題です。家庭でも簡単にできる秋らしいスイーツについてご紹介したいと思います。どうぞ、お楽しみに・・・。
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