前代未聞の日帰り香港ロケ。
行ったはいいが、最終便に乗り遅れて帰れず…
今回は海外ロケでのトラブル。私がプロデューサーを務めていた「なるほど!ザ・ワールド」15年間の放送の中で、予算オーバーした大型企画といえば、南極、北極、グリーンランド縦断などの極地取材があった。スタッフひとりあたり100s以上の重装備と長期ロケで、1回に2回分の予算を使ってしまう。ということは当然ほかの回で帳尻を合わせないといけない。つまり近場のロケをやるしかないということになる。
そこで思いついた苦しまぎれの策が、当時としては例がなかった日帰り海外ロケ。
「日帰りならホテル代もかからないし、経費も一日分で済む」
「香港なら現地で約4時間。制限時間内でどう撮れるかだよな」
「じゃ、もう一台別班で小型カメラを持っていって、ロケ隊のあわてぶりも入れて構成しよう」
かくして前代未聞の香港日帰り企画が敢行されることとなった。
そんなロケ当日の夜、私がデスクで仕事をしていたら、香港のスタッフから国際電話が入った。
「王さん、すいません! 渋滞にはまって最終便に遅れました」
(やっぱり日帰り香港には無理があったか…)「ま、しょうがない。明日帰ってきたら?」
「それが大変なんです。実はレポーターの清水アキラさんが、明日の昼からワンマンショーの舞台に出るんです。明朝の一便で帰っても間に合わないんですよ。王さん先方に謝ってくれませんか?」
なに!これはエライことになったぞ。清水アキラさんのショーは、当然チケットはすでに販売済み。もしキャンセルすれば、弁償額は数千万円にのぼるだろう。
さあ、困った。とりあえず空港から離れないよう指示し、解決策を考えた。一刻も猶予ならない。
「そうだ、ほかの経由地を利用すれば、最終便に間に合うかも!」
台北経由、上海、ソウル。とりあえず日本に着いてしまえばいい訳だから、大阪、名古屋行きでもいい。すべての航空会社の時刻表とにらめっこしてパズルを解くように必死に調べた。残念、すべて香港を出発した後だった。
もう無理かとあきらめかけたころ…
「あ!バンコクから東京行きの深夜便があったはずだ。確かバンコクを深夜0時ごろ出発する」
私は即、香港チームに連絡した。
「今からバンコクへ行ける?」
「エーッ!何でまた遠くへ?」
「バンコクから東京への深夜便があるじゃないか。それに乗れば明朝成田へ着く。全員帰る必要はない。清水アキラさんとマネージャー2人だけでいい!」
最後の神頼みでバンコク行きを探したら、これから最終便が出るという。ソレーッとばかりに2人はバンコクへ。深夜便の成田行きに無事間に合った。
私たちは、まっすぐ東京へと戻ることばかりに頭がいっていたが、こういうときこそ“急がば回れ”。最後まであきらめず粘った甲斐があった。
ところで随行していた別班の小型カメラは、ちゃっかりこのあわてぶりの一部始終を記録して放送した。きっかけは低予算からはじまった苦しまぎれの企画。ハラハラドキドキの連続で、拍手喝采というおまけがついたというわけ。
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