たった30秒のシーンのために空撮ありの8時間ロケ。
そこにヒットを生むカギが・・・
「なるほど!ザ・ワールド」で、ある時、鹿児島へロケに行くことになり、私はディレクターのA君を任命した。A君は毎回すばらしい作品を作るのだが、難は予算と時間に無頓着なこと。締め切り時間を過ぎてもでき上がらず、いつもハラハラドキドキさせられる。
さてこの鹿児島ロケの場合、東京からカメラクルーを連れて行くと飛行機代がかかるので、地元の局にカメラクルーを要請して協力してもらうことにした。その浮かせた費用で、現地でヘリをチャーターし、空撮を敢行。丸一日8時間ロケを行って、ディレクターA君は帰ってきた。他の要素も加えて、トータル5分位の作品。手間際かけただけあって、さすがにすばらしい内容に仕上がった。
放送後、鹿児島から一本の電話。
「そりゃないよ!ちょっとひどいんじゃないですか。8時間もロケしたのに、使われた映像はたった30秒なんて」
鹿児島の局のスタッフからのクレームだった。確かにビデオを見てみると鹿児島のロケーションは30秒しかなかった。逆に言えば、A君はたった30秒の画作りのために鹿児島まで出かけた訳だ。
私たちは当時、熾烈な視聴率争いをしており、毎回超がつくすごい内容の作品作りを目指していた。
ちょっとでも安易な内容だと、視聴率はそっぽを向いてしまう。8時間分の収録した画から使ったのはわずか30秒。それはマグロに例えるとトロの中の極上トロだけを使ったようなものである。それ以外の画はすべて捨ててしまう。その捨てた画は「ムダ」というひと言で片付ける訳にはいかない。
「もったいないから鹿児島のシーンは2分間使おう」と考えたら、この作品は駄作になっていた。
ヒットを生む陰には、表には出ない膨大なエネルギーが費やされている。
ネタ会議もいい例だ。「なるほど!ザ・ワールド」は、毎週1回ネタ会議をやっていた。夕方6時からスタートするエンドレス会議で、終わるのは早くて夜11時。夜中の2時過ぎまでやることも珍しくない。スタッフは総勢30〜50名。毎回あらゆるソースからたくさんの情報を仕入れ、その中からネタを厳選し、さらにおもしろくならないかとアイデアストーミングをしていく。
ネタの採用率はざっと100分の1以下。1回のネタ会議に100枚以上のコピー紙が提出され、採用はその中からせいぜい1枚。当然ほかは廃棄となる。ネタが少々悪いときは「切り口や見せ方次第で大胆に変わるかもしれない」。あるいは「もう一度調べ直せば、裏には意外な情報が隠れているかもしれない」と何度も練り直す。
いいネタがそろわないと会議の雰囲気も悪くなる。議論を中断し、気分転換のため、外の空気を吸いに行く。放送スケジュールはどんどん迫ってくるが、「この辺で妥協しませんか?」は禁句だ。再び会議室にもどって会議再開。するとさっきまで暗いトンネルから抜け出せなかった問題点が、パッとしたひらめきで解決することもある。
「ヨシ!明日すぐにこの線で急ぎ仕込みしよう!」気がづけば、空が少し白んでいたりする。
スタッフ全員あきらめなかった。
それはどこよりもすごい番組を放送していこうという高いモチベーションが全員にあったからだ。 目指していたのは、最高の視聴率ではなく、テレビに革命を起こすこれまでにない番組づくり。それが、私たちの理想であり目標だった。
数字はあくまでもその結果にすぎない。
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