夏に雪山、冬に水着
ヒットの裏に逆転の発想がある
「今晩ザギンでシース、どお?」「ちょっとネーカーが・・・」なんて、変な日本語を使っている人がいたら、それは間違いなく古株のテレビ業界人だ。理由はわからないが、昔、音楽関係者は音楽用語を逆にいっていた。「メンフ」
「ターギ」 「ドンパ」 「スーベ」などなど。その流れで、普段の会話もひっくり返してしゃべるクセができてしまった。
私もそんなテレビ業界人のひとり。そうした素地があるものだから、何でも逆さにしてしまう発想法は得意だ。ある時、私は”逆さ言葉”があるなら”逆さ唄”があってもいいのでは・・・と思いつき、それをクイズにした。唄を逆さから聴いて曲名を当てる”逆さ唄クイズ”が誕生した。しかも出来上がっている楽曲をただひっくり返して聴いても、安易で耳障りだけなので、思い切って歌い手に生で挑戦してもらうことにした。
「そんなことできるのかな」
「でも、できたらおもしろいので、何とかお願いします」
作曲家に無理を頼んで譜面を逆さから書き直し、日本語をローマ字に変換して、逆に並べながら音符にはめ込んでいただいた。出来上がった譜面を見ながらバンドに演奏してもらい、歌手に歌ってもらった。全てが初めてのことなので悪戦苦闘した。
「この曲名は何でしょう?」とクイズを出し、解答後、録画したビデオを逆さから再生して見せた。逆さ唄を逆転すれば、正常に戻るはずだが、そうは行かない。予測もしない何とも奇妙な音楽に、歌った本人も視聴者もバカ受けしてヒットコーナーとなった。この企画は、今もテレビ番組で時々使われているのを目にする。
私はテレビの企画を考えるとき、”真冬に夏の企画” ”真夏に雪景色を放送”という発送をする。寒くなるとハワイが恋しくなり、暑いときは涼しい雪山が見たくなるのが人間の心理。新作水着の発表会が行われ、水着モデルの写真が芸能誌面を飾るのは寒い季節に集中している。
かつて私が制作していた「なるほど!ザ・ワールド」では、エンディングはオープニングと定義していた。通常、番組の最後は、スタッフロールが流れ、ちょっと寂しい叙情的な音楽が鳴り、映像はスローモーションか夕日が沈むというのが定番だ。
私はそういう型にはまったエンディングにしたくはなかった。エンディングにもう一度、オープニングの”これから始まる”的な景気の良い曲をかけ、しかも映像は、取材した村や街が去っていく画ではなく、道を走っていく正面の見た目、つまり”これから次へ行く”という演出をした。
こういう演出の狙いや意図はいちいち番組内で説明することはないが、番組一本の終わりは、次回の始まりだということを感じ取って欲しかった。こういう見えない演出が大事なのだ。
よく考えれば”終わり”はすべて”次への出発”といえる。2007年が終われば、2008年がスタート。今日の閉店は、明日の朝また新しい開店だ。学校を卒業すれば、社会への出発。結婚はゴールインではなく夫婦生活の始まり、失恋すれば、また新しい出会いを求める。逆から考えると新しい展開が見えてくる。
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