収録当日、春の大雪でピンチ!
スタッフもタレントもそろわず窮地に立たされた"雪男"は・・・
毎年3月になると、各テレビ局は改編期で特別番組を編成する。
私は「なるほど!ザ・春の祭典」という大型特番を10年間制作した。
全番組が 一同に会し、番組対抗でクイズに挑戦するという半年に一度の番組祭りだ。
出演者だけでも総勢80名。当然スタッフも総動員だ。私たち以外にも、各番組の出場チームを応援するため、局中のプロデューサーやディレクターがかけつけてくる。本番近くなると、500人以上にふくれ上がり、スタジオ内は人でごった返す。
ある年、事件が起きた!
もう3月だというのに、よりによって、収録当日に大雪が降ったのだ。都心で積雪10cm以上。交通は完全に麻痺し、タレントもスタッフもやってこない。
「これは大変なことになった。本番ができないかもしれない!」
それでもタレントは、なんとか車にチェーンをつけて遅ればせながらも集まってきた。
問題はスタッフだ。中でも一番困ったのがカメラマン。
カメラは6台あるのに、カメラマンが足らない。
自宅に電話をかけて「局に出てくれませんか」と頼んでも「電車が全然動いてないんだよ」と、郊外に住んでいるスタッフも弱りきった様子。
代わりのカメラマンはいないだろうか。
技術部の部屋に助けを求めに行ったがガラーンとしている。
この日のために3ヶ月以上、それこそ休みナシで準備をしてきたのに。
「なんで大事な日に大雪が!」
私は外へ出て、雪空を仰いで神を恨んだ。私は窮地に立たされた。
誰のせいでもないことはわかっている。でも皆の視線が私につきささる。
「王さんはやっぱり雨男だ」
思い切って、一週間後に本番を変えられないだろうか。
いや、これだけの豪華タレントをもう一度集め直すことは絶対不可能だ。
「王さん、本番やるの?やらないの?」「行くけど、ハイヤーを迎えに出してほしい」
タレントのマネージャーからもガンガン電話が入ってくる。
「ところでお客さんはどうなっている?」
「一人もきていない?!」
やっぱり無理か?
しかしどう考えても今日やるしかない。カメラの台数が足らなくてもいい。客の代わりに関係者でカバーしよう。これ以上迷っていると本番終了が朝になってしまう。
「タレントさん、ほぼ揃いました!」
「ヨシ!やろう!」
「マネージャー、お付きのスタッフの皆さん、今日は客席が空いています。
拍手、笑いの応援をお願いします」
スタッフはとにかく大声を出して場を盛り上げる。
いざ本番!
スタジオにいる全員が、この逆境の中で、かえって燃え上がり、妙にハイテンションになっていた。客席にいる人数は少ないが、3倍ぐらいの拍手と笑いが起こり、出演タレントもボルテージ最高潮、異常に盛り上がった。
予定より少し遅い深夜2時過ぎ。
「おつかれさまでした!」
本番が終わった瞬間、誰に拍手をおくるというわけでもなく、自然に拍手が沸き起こり、それはすぐにうねりとなって、スタジオは大拍手の嵐に包まれた。
後日、予定通り、無事放送が終わった。スタジオの熱気がそのまんま視聴者に伝わったのか、高視聴率という最高の結果が出た。
神様はいたずらのあとに、ご褒美をくれた。 |